外資系ママリクルーターの"勝手に採用論"

グローバル企業の採用担当をする中で考えた”採用の仕事”や”育児との両立”について綴ります

TA Managerとして第一に押さえるべきこと

Talent Acquisiton(TA) Managerになって2年以上が経ちました。今までを振り返り、「TA組織の運営にあたり、第一に押さえなくてはいないこと」を考えてみました。

TA Managerがやるべきことは何でしょう?

例えば、、

ダイレクトソーシングやリファラルを推進することで採用コストを下げること?

採用ブランディングの強化により応募数を増やすこと?

メンバーへのコーチングを通してチームのパフォーマンスを上げること?

 

どれも大事ですが、その根底には、適切な体制があり、実施すべき施策を適切に割り当てられる状況である必要があります。

なので、最も大事なことは


「必要な体制を予測して、先んじて確保すること」

 

と思ってます。

 

「採用ターゲットの変動」と言う外部要因によって、ここまで体制を大きく、即時に増減させなくてはいけない組織、と言うのは採用部門の特異な面だと思ってます。中途採用だけで年間1000人以上の採用を行うような弊社では、様々な種類の採用があります。

 

・エグゼクティブ層の採用
ボリュームゾーンの正社員の採用
契約社員の短期間での大量採用
・地方での採用
・転籍や雇用形態変更における人事手続き 等

 

それぞれの難しさがあり、すべてができるリクルーターと言うのは基本的にいないと思ってます。

その時々の採用ターゲットに合わせて「どのように体制を作るか」、「どのエリアの体制が今後不足するか」を、できるだけ先を予測しながらいくつかのオプションを考えておく必要があります。

また、一つの会社で10年以上リクルーターとして働くケースは珍しく、採用チームは比較的メンバーの入れ替わりのある組織です。メンバーのキャリアの希望も理解した上で、「どういった人材を確保する必要があるか」、「どういった業務を外部に委託するのか」をできるだけ先を見越して準備することが必要です。

その際、「Flexible Resourceの割合をどれくらいに設定するのか」、「社内で常においておくべきコアスキルは何か」を整理しておくこと迅速な対応ができます。

 

必要な体制を作り、やるべき施策を行うことで、必ず結果はついてきます。
結果がわかりやすいところが採用の面白さであり、チームで難しいターゲットを達成できた時、TA Managerとして最も嬉しい瞬間だと思います。

 

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掲載内容は個人の見解であり、所属企業の立場・戦略・意見を代表するものではありません

ダイレクトソーシングができる組織の作り方ー組織化編

外資系IT、コンサルティング会社でダイレクトソーシングが進んでおり、ダイレクト採用比率の高い会社では、①ソーサー、②リクルーターと役割を分け、①ソーサーは「人材プールの構築」、②リクルーターは「プールから募集中のポジションにあった人材を見つけ、採用決定につなげる」と分業しているケースがあります。

一方で、ダイレクトソーシング第一人者と言われる会社のインタビュー記事(*)を見ていても、全てのケースで分業しているわけではなさそうです。分業はどういった場合に有効なのかを考えました。

 

分業が向いている場合
①同じようなスキルの人を大量採用する場合(例:Java developerの大量採用)

 

②ポテンシャル人材を大量採用する場合(例:第二新卒

 

分業が向いていない場合
①特定の要件で、数名づつ、多くの種類のポジションで採用する場合(少数多品種型の採用)

 

②ハイクラスの採用の場合


ダイレクトソーシングでは、(1)スカウト時のターゲット選定(どんな人にアプローチするか)、(2)効果的なアプローチ方法の検討(どうしたら返信がくるか)
(3)応募意思の獲得(リクルーター面談での魅力づけ)を実施するフェーズがあり、選考通過状況を見ながらPDCAをまわして(1)〜(3)の精度をあげていく必要があります。
なので、分業する場合、ソーサーとリクルーターの情報連携が重要です。

 

同じようなスキルの人を大量採用する場合や、ざっくりした要件でポテンシャル人材を大量に集める場合は、ターゲット選定もしやすいですし、途中の変更も少ないので分業によるオーバーヘッドが少ないです。また、一般的にビジネス部門との連携が密なリクルーターの方がソーサーより部門の状況をよく把握していますが、大量採用の場合は一度スカウトテンプレート、面談スクリプトを作ってしまえば、ソーサーが直接部門と関わっていない場合でも一定レベルで応募意思の獲得につなげることができます。

 

一方で、少数多品種型の採用の場合は、多くのパターンでのスカウトテンプレート、面談スクリプトが必要ですし、選考の状況によりフォーカスポジションも都度変わるので分業によるオーバーヘッドが大きくなります。
また、ハイクラスの方の採用の場合は、それなりの経験・情報量をもったリクルーターでないと応募意思の獲得が難しいですし、スカウトの段階で「誰がスカウトをうつか」も大事になります。ハイクラス採用で分業する場合は、「候補者のリストアップのみ」という分業の方が良いと思います。

 

少数多品種型でも、スカウトのリストアップのみを安価で提供するRPOサービスの活用など、限定した範囲での分業は有効だと思います。
また、大量採用でなくても、至急採用しなくてはいけない場合は、期間限定でソーシングのみに集中してもらう人をアサインした方がよい場合もあります。

 

チームの体制やスキルによって、どんな方法が最適かは変わってくるので、それぞれの状況で最適な解決策を考え、採用数を最大化させる仕組みづくりが重要ですね。


(*)ダイレクトソーシング第一人者企業のインタビュー記事
https://www.dodadsj.com/content/190411_accenture/
https://www.dodadsj.com/content/170912_oracle/

ダイレクトソーシングができる組織の作り方ースタート編

年間数百人以上の中途採用をし、半分以上をダイレクトソーシングで採用している会社はまだ日本では少ないのではと思います。いきなりそのレベルに到達しないとしても、ダイレクトソーシングでの採用を軌道にのせるために何が必要か、考えてみました。

 

まずやってみることが大事

ダイレクトソーシングと他の採用手法の大きな違いは、「スカウトをして自分で応募意思をとる」ということなので、やることはシンプル。まずはやってみると、課題も見えてきて改善のアクションも見えてきます。

 

目的を明確にする

ビジネス部門にとっては良い人材を獲得することが重要であり、手法に関心はありません。リクルーターも忙しくてダイレクトソーシングに時間を割く余裕がないことも多いです。なので、なぜダイレクトソーシングをする必要があるのかを関係者に納得してもらう必要があります。必要であればビジネス部門に、少なくとも採用チームの中では、共通認識を持っておくことが重要です。

               

スコープを決める

全てのポジションでダイレクトソーシングを始めても非効率なので、スコープを決めます。どういったスコープにするかは、「ダイレクトソーシングで実現したいこと、目的」を踏まえて決定します。採用難易度の低い領域、ニッチな領域、ボリューム採用の領域、などそもそもの目的によってスコープは変わります。

 

結果を急ぎすぎない

100通スカウト打っても、まず返信はそれほど返ってきません。1〜2週間経って返信がきてから応募意思獲得→選考→内定獲得まで、慣れている人でもスカウトから内定まで2ヶ月ほどかかります。初めて取り組む場合は、ある程度結果がでるまでは半年は見た方がよいです。

 

コーチ役を作る

 少しでも早く軌道にのせるためには、バラバラに始めるより、コーチとなる人を置き、効果が出るやり方を共有しあいチームの中でブラッシュアップするとよいです。コーチ役はダイレクトソーシング経験が豊富である必要はなく、自社の魅力をよく説明でき、候補者を口説ける「営業力のあるリクルーター」が良いと思います。

 

ビズリーチ やLinkedinなど、ダイレクトソーシングのプラットフォームを提供している会社では無料の勉強会も開催しているので活用してみるのもお勧めします。

 

ダイレクトソーシングで返信がもらえるコツ〜メール本文に記載すべき5つのこと

メールタイトルでまずメールを開いてもらったら、本文を見て「返信」のアクションをしてもらう必要があります。
私はスカウトした候補者との面談の中で、最初に必ず「なぜ返信をくれたか?」質問します。

その中で、「XX社が大手だから」「情報収集の一環で、とりあえず話を聞いてみたい」という方もいらっしゃいますが、多いのが「XX社がこういうビジネスをしていると知らなかったが、スカウト内容をみて興味が惹かれた」という方です。

元々自社を転職先のターゲットとしていなかった人に、「まず話を聞いてみよう」と思っていただくためにはどのような事をスカウトメールに記載するとよいのでしょうか?

 

①スカウトした理由
なぜ多くの登録者の中からあなたにコンタクトしたかを伝えます。レジュメの内容から、「XXの経験が活かせる」「XXのキャリアの志向とあっている」と具体的にその方にあったオファーであることを伝えます。

 

②職種・職位レベル
職種や職位の想定ありきで転職している場合もあるので、ここで候補者の希望とあっているものを提案することが重要です。

 

③仕事内容
Job descriptionの業務内容の抜粋に加えて、「他社では経験できないユニークな点」「キャリアにおけるメリット」を伝えます。
よりイメージをもってもらうために、Hotなプロジェクト事例や社員のインタビュー記事のリンクを掲載することも有効です。

 

④会社の特徴
最新の事業内容、ビジョン、ビジネス状況を伝えます。「あまり知られていないが魅力的なポイント」をいかに伝えるかがポイントです。

 

⑤カジュアルなミーティングの提案
転職意思が固まってなくても、情報収集の一環でよいことを伝えます。電話で15~30分位なら話を聞いてもいいかなと思う方も多いです。

 

挙げてみると、ごく普通のことなのですが、重要なのは「具体的な内容であること」「送る相手に響く内容であること」です。

そのためには、日々アンテナを高くもって情報収集し、「どういった人がどういう切り口ならこのポジションに興味をもつか」というペルソナ設定ができていることが大切です。自分自身が転職サイトに登録してみて「どういうスカウトに自分の心が動いたか」を研究してみるのもオススメです。

ダイレクトソーシングで返信がもらえるコツ〜メールタイトルの5つのポイント〜

候補者は大量のスカウトメールを受け取ります。返信をしてもらうためにはどんな工夫ができるのでしょうか? 一つはメールのタイトルで人を動かすきっかけを作ることです。まずはメールを開いてもらわなければ始まりません。
今まで工夫してみて効果的だったことをまとめました。


①返信のハードルを下げる、②特別なオファーであることを伝える、③最先端の仕事を強調する、④危機感に焦点をあてる、⑤ポジショングレードを明記する

 

【返信がもらえるタイトルの5つのポイント】 
①返信のハードルを下げる
 例)カジュアルにお話ししませんか?(弊社戦略・キャリアパスについて)

本文でも、「お電話で15〜30分」、「今後のキャリアを考える上での情報収集として活用してください」など気楽さを強調する

②特別なオファーであることを伝える
 例)執行役員との面談にいらっしゃいませんか?
   【特別スカウト】とトップに記載

③最先端の仕事を強調する
 例)新聞に載る新事業を立ち上げませんか?
   AIを使いこなすコンサルとして時代を先取りしませんか?
   XXを革新するConfidentialプロジェクトに参画しませんか?

④危機感に焦点をあてる
 例)人生100年時代に勝ち残るキャリアをつくりませんか?
   PMOではなく「事業創出」コンサルに特化しませんか?

⑤ポジショングレードを明記する
 例)ディレクターポジションのご案内

 

自らがメールを受け取ることを想像して、心が動くかを自問してみましょう。タイトルを書いた後、少し時間を置いてみて、改めて見直してみるのも良いかもしれません。

ダイレクトソーシングのメリット

最近大分浸透してきましたが、ダイレクトソーシングとは、「SNSや人材登録データベース上の求職者に対して、企業自らがスカウトメールなどを介して、直接コンタクトをとってリクルーティング(ヘッドハンティング)していく手法」のことをいいます。「日本の人事部」の調査によれば、直近1年で43%の企業が「ダイレクト・ソーシングを導入・強化した」とのこと。

私が在籍している企業では5年以上前からダイレクトソーシングは主な採用手法の一つとなっています。
“難しそう”、”効果がでるまで時間がかかる”という声もあるそうですが、ダイレクトソーシングは①欲しい人材の獲得、②コスト適正化、③リクルーターのスキル向上 の観点で、非常に効果的だと思っています。

もちろんその他の採用(人材紹介会社経由など)も非常に有力な採用手法ですが、ダイレクトソーシングのメリットをまとめました。

 

①欲しい人材の獲得


多くの企業が求めるスキル・経験を持っている人には、採用サイトに登録したら週に何十通もスカウトが届きます。
人材紹介会社(Agent)経由の場合は、候補者に対して「自社が契約しているAgentがコンタクトできる」→「そのAgentが自社を紹介してくる」のステップを経て、やっと候補者に自社の情報が届きます。
Agent側も、Client企業の特徴やポジションの魅力がわかっていないと紹介しづらいので、企業のリクルーターは、「まずAgentに、自社が求める人材や、自社・ポジションの魅力を理解いただく」という下準備も重要です。大手Agentの場合、企業担当と候補者担当が分かれているので、Agent内での情報伝達にも時間がかかります。そう考えると、本当に欲しい人材にリーチできるまで、かなりの時間と工程がかかることがわかります。

その点、ダイレクトソーシングですと、欲しい人材にダイレクトにアプローチできるので、工程を一気に短縮することができますし、自社の魅力をリクルーターが直接売り込みもできます。

 

②コスト適正化


Agentを経由すると、一人の採用に対して年収の30~35%位のFeeの支払いが発生することが一般的です。
もちろん、エグゼクティブクラスの採用など企業のリクルーターでは難しい場合など、この道のプロフェッショナルのAgentに依頼した方がよい場合も。特定領域のポジション(産業医や弁護士など)も、その領域に強いAgentに依頼する方が良いと思います。
一方で、メンバークラスも含めて数百人採用する場合、Agent中心ですと、Agent feeだけで数億にのぼります。
ダイレクトソーシングでは、「候補者を探しにいく」リクルーター工数や、その分のリクルーターの人件費はかかりますが、ボリューム採用をするなら、かかる費用は圧倒的に少なくなります。
ダイレクトソーシングで採用する領域、Agentにお願いする領域を整理し、コスト適正化することにより、限られた費用で採用数を最大化させることができます。

 

③リクルーターのスキル向上


ダイレクトソーシングをやってみると、まず驚くのが「スカウトを打ってもなかなか返信が返ってこないこと」です。
返信してもらうためには、スカウトの件名や本文に工夫が必要なのですが、「自社やポジションの業務内容」、「外からどのように見られており、どのように魅せたいか」「どんな人が自社・ポジションに興味もってくれるはずか」などを分析しないと、なかなか効果的なスカウトを打つことができません。
そうなると、自然と自社の業務について勉強するようになって、「自社・ポジションを売れる」プロフェッショナルなリクルーターに短期間で成長します。
実際、私自身もダイレクトソーシングをするようになって、Agentの方から「こういう情報をください」とお願いされていたことの意味もよく分かりました。ダイレクトソーシングで身につくスキルは、Agent採用にも役に立つと思います。Agentさんに味方になっていただくためには、それなりの対価(採用につながる情報提供など)が必要だからです。


Agentさんが持っている独自の人材データベースもあるので、「ダイレクトソーシングだけで良い」というわけではないですが、双方の良い点を組み合わせていけるとよいですね。