外資系ママリクルーターの"勝手に採用論"

グローバル企業の採用担当をする中で考えた”採用の仕事”や”育児との両立”について綴ります

ダイレクトソーシングのメリット

最近大分浸透してきましたが、ダイレクトソーシングとは、「SNSや人材登録データベース上の求職者に対して、企業自らがスカウトメールなどを介して、直接コンタクトをとってリクルーティング(ヘッドハンティング)していく手法」のことをいいます。「日本の人事部」の調査によれば、直近1年で43%の企業が「ダイレクト・ソーシングを導入・強化した」とのこと。

私が在籍している企業では5年以上前からダイレクトソーシングは主な採用手法の一つとなっています。
“難しそう”、”効果がでるまで時間がかかる”という声もあるそうですが、ダイレクトソーシングは①欲しい人材の獲得、②コスト適正化、③リクルーターのスキル向上 の観点で、非常に効果的だと思っています。

もちろんその他の採用(人材紹介会社経由など)も非常に有力な採用手法ですが、ダイレクトソーシングのメリットをまとめました。

 

①欲しい人材の獲得


多くの企業が求めるスキル・経験を持っている人には、採用サイトに登録したら週に何十通もスカウトが届きます。
人材紹介会社(Agent)経由の場合は、候補者に対して「自社が契約しているAgentがコンタクトできる」→「そのAgentが自社を紹介してくる」のステップを経て、やっと候補者に自社の情報が届きます。
Agent側も、Client企業の特徴やポジションの魅力がわかっていないと紹介しづらいので、企業のリクルーターは、「まずAgentに、自社が求める人材や、自社・ポジションの魅力を理解いただく」という下準備も重要です。大手Agentの場合、企業担当と候補者担当が分かれているので、Agent内での情報伝達にも時間がかかります。そう考えると、本当に欲しい人材にリーチできるまで、かなりの時間と工程がかかることがわかります。

その点、ダイレクトソーシングですと、欲しい人材にダイレクトにアプローチできるので、工程を一気に短縮することができますし、自社の魅力をリクルーターが直接売り込みもできます。

 

②コスト適正化


Agentを経由すると、一人の採用に対して年収の30~35%位のFeeの支払いが発生することが一般的です。
もちろん、エグゼクティブクラスの採用など企業のリクルーターでは難しい場合など、この道のプロフェッショナルのAgentに依頼した方がよい場合も。特定領域のポジション(産業医や弁護士など)も、その領域に強いAgentに依頼する方が良いと思います。
一方で、メンバークラスも含めて数百人採用する場合、Agent中心ですと、Agent feeだけで数億にのぼります。
ダイレクトソーシングでは、「候補者を探しにいく」リクルーター工数や、その分のリクルーターの人件費はかかりますが、ボリューム採用をするなら、かかる費用は圧倒的に少なくなります。
ダイレクトソーシングで採用する領域、Agentにお願いする領域を整理し、コスト適正化することにより、限られた費用で採用数を最大化させることができます。

 

③リクルーターのスキル向上


ダイレクトソーシングをやってみると、まず驚くのが「スカウトを打ってもなかなか返信が返ってこないこと」です。
返信してもらうためには、スカウトの件名や本文に工夫が必要なのですが、「自社やポジションの業務内容」、「外からどのように見られており、どのように魅せたいか」「どんな人が自社・ポジションに興味もってくれるはずか」などを分析しないと、なかなか効果的なスカウトを打つことができません。
そうなると、自然と自社の業務について勉強するようになって、「自社・ポジションを売れる」プロフェッショナルなリクルーターに短期間で成長します。
実際、私自身もダイレクトソーシングをするようになって、Agentの方から「こういう情報をください」とお願いされていたことの意味もよく分かりました。ダイレクトソーシングで身につくスキルは、Agent採用にも役に立つと思います。Agentさんに味方になっていただくためには、それなりの対価(採用につながる情報提供など)が必要だからです。


Agentさんが持っている独自の人材データベースもあるので、「ダイレクトソーシングだけで良い」というわけではないですが、双方の良い点を組み合わせていけるとよいですね。